『人はお金のためではなく、愛する人のため、幸せになりたいために働いている』


経営者のなかには「人はお金のために働く」と考え、お金をはじめとした物的なものにすべての価値判断を置いて言動する人がいるが、それは間違っている。こういうエピソードがある。


 新聞の折り込み求人チラシを持った中年の婦人が、娘とともにある会社を訪ねてきた。

 婦人は事務所にいた社長に「この子(少女)を働かせてください」と嘆願するが、社長は「この子では無理だ」と断った。すると婦人は重ねて「どうかこの子を働かせてください。私も朝八時から夕方五時まで一緒に働きます。私の給料は一円もいりません」と涙ながらに嘆願したという。


 「誰もがお金のために働き、職場は金稼ぎのための場所にすぎない」と考えていたその社長は、母親のこの言葉を聞いた日を境に、「人はお金のために働くのではなく、世のため人のため、愛する人のために働くのだ」と、考えを新たにした。


 ちなみに、この少女を採用した会社は、その後今日まで、一貫して成長・発展し続けている。


坂本光司